2021/05/06 15:43


六本松蔦屋書店 森さんの書評
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福岡在住の紀行家、パレスチナ料理専門家の菅 梓(すが あずさ)さんによる、エルサレムへの旅の紀行文。
彼女がパレスチナに没頭する、そのきっかけの旅が描かれている。
イスラエルへの入国は、隣国であるヨルダンから陸路でアプローチしている。この国境は「世界一厳重な国境(イミグレーション)キング・フセインブリッジを渡ることになる。
この面倒なルートは旅マニアが選ぶルートである。彼女自身も旅好きで、だからとても彼女らしい選択となる。
さて、彼女は旅先での出会いを、実り多きものに育てられる人間である。
先入観をもたずオープンマインドで人と接する。
もちろん異国での警戒心もあるが、判断基準は自分の直感である。そしてそれが新しい出会いを生んでいく。
好奇心、相手に対する気遣い、そしてオープンマインド。
彼女流の異文化コミュニケーションの基礎は、私たちにも必要なものだ。
縁を大切にすると豊かな旅となる。その見本がここにはたくさんある。
この本はいわゆる自主製作でのZINEだが、ニュース記事などに寄稿しているだけあって、文章に気遣いが行き届いている。
文体はよどみなく、不必要に装飾せず、体験したことには自分なりの解釈を添える。
浅薄な知識から答えをだすのではなく、わからないのはわからないと認め、謙虚な姿勢でいる。
自分の価値感は明確だが、しかし読む人を置いてきぼりにする文章は書かない。
そういった気遣いがある文章だ。
そしてこの本は、菅さんの人生が変わる入口となった旅の記録でもある。
私たちはひとりの人間の、人生の転機となる旅を知ることになる。
彼女はイスラエルで、そのあと没頭する自分の人生をみつけるのだ。
菅さんはこのあと、頻繁にパレスチナやイスラエルを訪れて、
たくさんの人々と知り合い、彼らの生の言葉を消化していく。
ひとりよがりにならず、パレスチナの真の代弁者に近づいていく。
旅にはまる人は、自分だけの風景や感動に出会うために旅を繰り返すのかもしれない。
有名な観光地ではなく、何気ない風景やそこであった人々の表情や言葉。
それが特別な感動を与えることがある。まるで運命に導かれでもしたかのように。
その感動を知ると、旅はやめられなくなる。
この本はそんな運命的に惹きこまれいく作者と、エルサレムの様子を臨場感いっぱいに伝えてくれる。そんな一冊である。
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